ワタスゲの白い綿帽子のような綿毛がゆらゆら揺れるさまは,初夏の湿原の風物詩として有名だ。 多くの人がこの植物を意識するのはこの綿毛の時期であるが,実はこれは果実であり,それよりしばらく前,灰色のめだたない花が咲く。 よく似たサギスゲは,ひとつの茎に小穂が数個つくので見わけることができる。 茎の葉は葉身がなく葉鞘だけになっているのもサギスゲと違うワタスゲの特徴。 多年草。
【カレンダー・草木暦2024】 いがりまさし作品集
ワタスゲ 2003年7月6日 福島県尾瀬ヶ原 alt.=1414m
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【漢字名】綿菅
【別名】スズメノケヤリ
【花期】5 7月 【分布】北海道・本州(東北,関東,中部) 【草丈】足首 ひざ 【環境】山地・低山,高山・亜高山,湿地・池沼
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ワタスゲ 小穂はひとつの茎にひとつつく(福島県尾瀬ヶ原) |
ワタスゲ 鱗片(福島県尾瀬ヶ原) |
ワタスゲ 茎の葉は葉鞘のみで葉身がない(福島県尾瀬ヶ原) |
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ワタスゲ
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フォトエッセイ(野の花365日のワタスゲより) |
「ワタスゲの花が白く揺れている」 このような表現がまちがいだと,少し植物に詳しい人ならすぐ思うだろう。 「白いのは花ではなく果実である」と指摘するかもしれない。 しかし,正確にいうとこの白いものは果実そのものではない。果実の周辺についている花被片が伸びたものである。 そうなると,白い綿毛の状態は確かに花期を終え果実期を迎えてはいるが,花期を終えた花の一部であるともいえるのである。 冒頭の文を正確に言いなおすとすれば, 「ワタスゲの終わった花の一部=花被片が,白く揺れている」となるだろう。 もっとも,こんな言い方を詩人に強要するのはナンセンスきわまりない。花でも果実でもワタスゲの美しさにはさして変わりはない。 しかし,この綿毛に囲まれるように小さな果実があることを知れば,詩人でなくとも,そこにパラシュートに乗った小さな妖精が見えてくるにちがいない。
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【見わけ方】 北海道の高山に生えるエゾワタスゲは,長い地下匐枝がある。 サギスゲは,茎に複数の花序をつける。
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