撮れたての自然シリーズ

4 シナノオトギリ
Hypericum kamtschaticum var.senanense

1990年7月29日 北アルプス合戦尾根
キャノンF-1 タムロンSP90mmF2.5 f4.5 1/250 RVP

 クモマスミレを求めて燕岳に登った帰り道、このシナノオトギリに出会った。高山植物 のなかではごく平凡な普通種である。どこの山にもたいていこのシナノオトギリか、よく似た近縁種が生えている。萼片や葉を透かして見ると濃い点や薄い点があり、この点の入り方が種類を見分ける重要な決め手になるのだそうである。
 白状するとこの写真のものも、自生地などから見てシナノオトギリとしたものの、持ち帰って調べたわけではないので同定に確信がない。いい加減な話で恐縮だが、間違いがあったらご指導いただきたい。
 さて、オトギリソウの仲間は、洋の東西を問わず昔から薬草として重宝がられていたようである。弟切草という名の起こりも、兄が秘密にしていたこの草の効能を弟が他人に洩らしたため、怒った兄に斬られたという悲惨な伝説にちなむといわれている。ヨーロッパに生える西洋オトギリソウも聖ヨハネ草と呼ばれ、やはり重要な薬草だそうだ。
 普段なら、よっぽど状態のよい株でないとなかなかカメラを向ける気にならない平凡な植物だが、朝露に濡れた草の葉から顔をのぞかせたシナノオトギリには、そのまま通りすぎることを許さぬなにものかを感じたのである。(1991年7月号)

(写真・文 いがりまさし)