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1月4日[その日の暦]

 
   Viola cotyledon?

日曜日は海外で撮影した植物を掲載する。
初っ端は季節がらということもあり,ロゼットビオラである。南半球の高山では今が盛夏にあたり高山植物の咲くシーズンである。
スミレといえば日本では可憐でやさしい,やわらかい質感の草本植物だ。北半球の多くの地域では日本人と同じようなイメージでとらえられているが,世界は広い。南半球には,写真のようにサボテンか多肉植物のような姿になるスミレが何種類もある。
撮影したのはアルゼンチンの南部。南緯40度,標高2000mぐらいのところで,北半球で言えばちょうど大雪山と同じような条件だ。しかし,ちがうのは降水量とその降り方だろう。
冬の間はそこそこ雪は降るが,夏場は何ヶ月もまったく雨が降らないこともあるという。雪どけ水だけをたよりに,自身の中に水分を蓄えて花を咲かせなければならない。
ファッションや気まぐれではなく,そういう環境がこの形を生み出した。

【見わけ方】
この「?」マークのついたスミレの存在を教えてくれたのはアメリカ人のスミレ友達だ。ノウエル・ハウペへ行くなら変なスミレがあるから見てこいとメールをくれた。
全体の形はViola cotyledonだが,柱頭の形がちょっとちがう。南米のスミレは柱頭に角や翼のような突起がついているものも少なくないが,本種もこの写真でもそれとわかるような大きな曲がった角状の突起が3つある。
文献で見るViola cotyledonは,柱頭に3つ突起はあるというものの,こんなに目立ったものではない。
この場所のものをまったく別の名前で同定している文献や標本もあるが,それもしっくりこない。
チリ中部のViola cotyledonを見に行く機会があればずいぶんすっきりしそうな感じだが,未だ機会がないままである。

【ひとくちメモ】
スミレの分類の大きな要になっているのは柱頭の先端の形である。
日本のスミレは,こん棒状のもの,カマキリの頭のような形になるもの,毛が生えるものなどがあるが,南米のスミレは外見に呼応するように柱頭の形も変化に富んでいる。
その中でも,このスミレの柱頭は変わっている。ある研究者に見せたところ,奇形ではないかと言われた。しかし,写真に写っているいくつもの個体の何十もの柱頭が同じような形をしているので奇形ではない。
2003年1月16日 アルゼンチン南部
キャノンEOS-1Ds  タムロンSP90mmF2.8 f14.05 絞り優先オート(-0.67)  1/ 99秒 ISO125 AWB sRGB


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