第3回撮れたてドットコム植物写真コンテスト

受賞作品ギャラリー


総評
応募総数52点。
秋から冬に向かう時期だけに,点数自体はやや低調でしたが,内容的には前2回をうわまわる力作ぞろいでした。
大賞の深谷さんの「朝露に輝く」は実は組み写真として応募されたものですが,その中の1点が群を抜いていたので,単独の作品として受賞しました。組み写真の,組み方としては一考の余地があります。
入賞常連となった,深谷さん,やまそだちさん,の作品には複数が最終選考まで残ったものもありました。最終選考までは,作者名を伏せて審査します。お2人には安定した力量を感じます。
次回は,ハイシーズンの応募期間となります。いっそうの力作を期待します。


撮れたて大賞

朝露に輝く by 深谷さん

【撮影データ】使用カメラ = Nikon D80
使用レンズ = SIGMA 17-70o
撮影データ = F16 1/80秒 ISO200
【作者エッセイ】
目的の野草を撮影する為に朝早く家を出発した。
まだ東の空が茜色に染まりだしたばかりだった。
高速を使って1時間半ほどかかるその場所まで寄り道をしないで行くつもりだったが、
昇りだしたばかりの朝陽を浴びて輝くエノコログサに遭遇して
思わず車を停めた。
エノコログサにはびっしりと朝露がついていてキラキラと光り輝いていた。
しかも一面のエノコログサだ。
あまりの美しさにどこをどう切り取ったらいいのかわからない。
夢中で撮影していたら目的の野草のことなどすっかり忘れてしまった。
【選者コメント】
「写真は光の芸術」といわれますが,植物写真も例外ではありません。このような写真が撮れる気象条件と時間帯は限られています。クローズアップなら比較的簡単にまとめられますが,ロングで隙のない画面を構成するにはそうとう経験を積む必要があります。明暗の使い方,特に遠景のハーフトーンの入れ方などに,撮りなれているという印象を受けます。エッセイも臨場感豊かで的確です。

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佳作1

落ち葉の林にたたずむ by ridge_lineさん

【撮影データ】使用カメラ = オリンパス E-3
使用レンズ = ZD 50mm マクロ
撮影データ = ISO 100,絞りF3.5,シャッタースピード1/50秒
【作者エッセイ】
紅葉も終わりに近づいた山道で遠目にはプラスチックの標識かと見間違えるような紅色の鮮やかな実をつけています。葉もきれいにそろっていて、誉めてあげたいほど端正な姿で冬を迎えようとしています。
ただ、春から夏にかけて下草が茂っていた林が、冬に向かうこの時期に目立つのはきれいな落ち葉とこのマムシグサ*だけになってしまう不思議さ。気になって調べてみるとマムシグサは有毒植物のようです。なにげない一見きれいそうな写真も、食べられるものは食べ尽くされて毒のあるものだけが残される、生態系のバランスが崩れつつある今を写しているのかもしれません。
【選者コメント】
完成度の高い作品です。最後まで大賞を争いました。長いレンズでバックを完全にぼかしてしまうこともできますが,林の輪郭を残したいい雰囲気の環境描写ができています。遠景の青い山陰が透けて見えているのも,色彩構成上,また遠近感の表出の上でもとても効果を上げています。エッセイも静かで作品の雰囲気によくマッチしています。

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佳作2

岸壁の花 by やまそだちさん

【撮影データ】使用カメラ = PENTAX K10D
使用レンズ = SIGMA 17-70mm
撮影データ = f11 -0.5 絞り優先
【作者エッセイ】
海岸の浸食で毎年減って来ている地元のハマギクです。
今年は例年より一週間ほど早めに行ってみました。
ちょっと早めかなと岸壁に近寄ると真っ白な見事な花が目に入りました。痛んだ花が一つもない状態で今まで見た中では一番良い状態のものでした。
風もなく,海の色もきれいです。
草むらに座り込み、一人のんびりと海を見ながらハマギクを堪能してきました。
【選者コメント】
やまそだちさんは3回連続の受賞です。今回もあと3点が予選を通過しているところを見ても,安定した力量の作者だといえるでしょう。ハマギクは大型の植物なので,比較的海をバックに入れることが容易で,似たような作品はよく見かけるのですが,この作品の味になっているのは,真っ白な白波。これがハマギクの白い舌状花とシンクロしているようで,秋の空気のさわやかさが表出されています。

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佳作3

笑顔の三姉妹 by onchanさん

【撮影データ】使用カメラ = ニコンD70
使用レンズ = タムロン
撮影データ = シャッタースピード160分の1 f4
【作者エッセイ】
車で6時間、2つの県境を越えて毎年訪れる場所がある。
やわらかい春の日差しにつつまれ、ちょっとうつむきながらその花は咲いていた。
【選者コメント】
奇をてらったところがなく素直にクローズアップされたところがこの作品の魅力でしょう。その素直さに1票を入れましたが,逆に言うともう一歩何かがあると魅力が倍増する作品です。被写体の前にいる時間をもう少しとってみるのも一案かもしれません。そうすると,そのもう一歩が見えてくることがあります。

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佳作4

〜踊り子〜 by さなえ(花の庵)さん

【撮影データ】使用カメラ = オリンパスC730
【作者エッセイ】
高い木立から
木漏れ陽がやわらかに舞い降りた

そこには冬の小人達が
舞台の出番を待っていた

赤い衣装を纏い
そろいの帽子をかぶりながら・・・・

近くで鹿の鳴き声がする
冬鳥も小さな声で集まっているようだ
私も切り株に腰を下ろそう

さぁ!観客はそろった

しずしずと幕が開き
スポットライトを浴びた赤い踊り子達が
キラキラと浮かび上がった
【選者コメント】
コンパクトでの撮影でここまでこなしたのは立派。画像の荒れが目立つことなど,欠点もあるが,それを補ってあまりあるムードのある作品です。暗く落としたバックに踊るバックのゴーストも効いています。エッセイはさなえさん独特の歌の歌詞のようなリズムを持っていますが,このリズムが作品の楽しげなムードとうまくかみ合っいました。

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佳作5

陽差しを浴びて by れいさん

【撮影データ】使用カメラ = Canon
使用レンズ = 100mm マクロ
撮影データ = F2.8 絞り優先
【作者エッセイ】
スキー場の芝生広場に、小さなリンドウがぽつりぽつりと咲いていました。
10月も半ばだというのに、汗ばむほどの暖かさです。
花たちは、陽差しを浴びて心地良さそうに佇んでいます。
私も、隣に寝ころんで、思い切り手足を伸ばしてみました。
大地の香りがします。
仲間が、「花の撮影は地面に近くて気持ちがいいね。」って。
【選者コメント】
いい写真の条件のひとつに,「空気が写っている」ということがあります。れいさんのこの作品では,その空気が,枯れ草の上のアウトフォーカスに託されています。そのなかにリンドウのボケがあるのがとても効いています。残念なのは,主役のリンドウとボケのリンドウが画面の左右中央になってしまったこと。この二つを結ぶ線を斜めに構成すると,より動きのある画面になったでしょう。

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予選通過作品(タイトル,ハンドルネーム)

波文様 カタクリの花〜,さなえ(花の庵)
伝えてよ、野の風を,さなえ(花の庵)(組み写真)
月桃,ごっかる
初めての出会い・・・サワアザミ,Cos
白いおひげ,さなえ(花の庵)
秋にあそぶ,あや
ナツエビネは誰がために咲く,すや
久しぶりの出会い,やまそだち
夏の終わりの砂浜,やまそだち
はじけはじめた,やまそだち
可憐,onchan
イエローカーペット,nekoppana
センナリホオズキ,深谷
秋の黄色い野菊,エコ