第1回撮れたてドットコム植物写真コンテスト

受賞作品ギャラリー


総評
応募総数93点。
残念ながら撮れたて大賞の該当作品は今回は出ませんでしたが,佳作の5点を選ぶのにはとても苦労しました。あと一歩で佳作を逃した作品もたくさんあります。
決め手となったのは,作品の素直さでしょうか。一般の,フォトコンテストで選ばれがちなフォトジェニックな作品よりも,素直に自然を描いてある作品に最後は軍配が上がります。
いわゆる,フォトジェニックであることが悪いわけではありませんが,ありのままの自然から遊離して視覚効果だけを追い求めた作品は,自然をよく知るものにとっては薄っぺらい印象を禁じ得ません。
逆にいうと,視覚効果と自然そのものがよく描かれているという,両輪がうまく稼動しきっている作品こそが,大賞に値すると思います。
とはいえ,このテーマは選者とて,シャッターを押しながら常に追い求めている課題です。
次回,そういった新しい風となる植物写真を期待したいと思います。


撮れたて大賞

対象作品はありません

佳作1

スミレの咲く風景、ニョイスミレ by エコさん

【撮影データ】使用カメラ = パナソニックFZ10
使用レンズ =
撮影データ =
露出 1/200秒
絞り  F8.0
【選者コメント】
小さなスミレの背景に風景を入れ込むことは,思いのほか難しい。これには一眼レフよりもコンパクトデジカメなら比較的やりやすいが,今度は,遠近感のない平板な画像になってしまう欠点がある。エコさんは,そのあたりをうまく両立させた。ニョイスミレを中心にもってこず,右に寄せたのも効果的だ。エコさんの作品にはほかにもスミレを風景とからめて作画する秀作が多かったが,その中でも爽やかさという点で抜きに出た作品だ。

拡大モード

佳作2

スプリングエフェメラル by 深谷さん

【撮影データ】使用カメラ = NikonD300
使用レンズ = SIGUMA 17-70o
撮影データ =
【作者エッセイ】
「スプリングエフェメラル(春のはかない短命の植物)と言われる早春の野草を見るなら佐渡がいい。」
と10年ほど前にある人から聞いたことがある。植物図鑑をぱらぱらとめくっていてオオミスミソウやカタクリ、キクザキイチゲのお花畑の写真に釘付けになったことがあるが、その写真が佐渡のものであった。
いつか佐渡に出かけてスプリングエフェメラルの花たちをこの目で見てみたいと強く思ったのはその時だった。
それから10年の歳月が経ち念願の佐渡行きを決行したのが昨年のGWの休暇だった。天候にも恵まれて憧れの佐渡は想像以上に素晴らしく、オオミスミソウもカタクリもキクザキイチゲも植物図鑑に載っていた通りの光景で、
「こんな素晴らしいところがあるんだ!」
と驚いたのを思い出す。
そして2008年、再び佐渡を訪れた。昨年の感動をもう一度!そんな思いにさせる魅力が佐渡には詰まっている。
さて、2008年の佐渡は昨年以上の迫力で私を迎えてくれた。山の斜面がカタクリとキクザキイチゲでびっしりと埋め尽くされていた。
昨年もこの場所を散策しているがこんなに密生はしていなかった。
それでも感動したのに今年はなんてことだろう!
どんな風に表現したらいいのか言葉が出てこない。
「一生に一度しか会えない光景かもしれないよ、もう二度と見られないかもしれないからよく見ておこうね。」
と同行の家内に興奮しながら話をした。
本当に二度と見られない光景かもしれないと思った。
花の咲く時期、花の密度は毎年同じとは限らないし、天候が悪ければ
カタクリもキクザキイチゲも花を開いてくれない。
その全ての条件が整った今、この場所にいる自分が幸せでならなかった。
【選者コメント】
「的確」ひとことで深谷さんの作品を語るとすればこの言葉に尽きるだろう。派手さはないが,雪国の春の林床の饗宴をそのまま描いている。てらいのない作画を許してくれるのは,優れた被写体だからともいえる。10年越しの念願だった佐渡まで足を伸ばしたというが,その興奮にもまれることなく冷静に作画することができたのは,2年目だったからだろうか。臨場感あふれるエッセイも高く評価できる。

拡大モード

佳作3

ヤマツツジにはっと! by やまそだちさん

【撮影データ】使用カメラ = PENTAX istD2
使用レンズ = TMARON SP 90m
撮影データ = f5.6 A-0.5
【作者エッセイ】
山道ではっとした。なんときれいなヤマツツジ
ヤマツツジはどこでも見られる。けして珍しい
ものではない。
高曇りの林の中、なんとも良い雰囲気、自然に
とけ込み、こちらを向いた姿に思わず見とてしまった。
【選者コメント】
見た目には美しくても,なかなか絵になってくれないツツジである。たいていはバックの空間がなくベタっとした感じの画面になりがちだ。林の縁に咲いていた個体を,望遠レンズでうまく浮かび上がらせたやまそだちさんのテクニックは,実直だが好感が持てる。バックの上部に空間を感じさせてくれるトーンがあること。ツツジの下部に的確な空間があることなど,細部への細やかな心配りがあり,おとなしいが見飽きることのない作画だ。

拡大モード

佳作4

空に向かって by ファルーカさん

【撮影データ】使用カメラ = D200
使用レンズ = Micro NIKKOR 55mm 1:3.5
撮影データ =
露出時間 : 1/100秒
レンズF値 : F3.5
露出制御モード : 絞り優先AE
ISO感度 : 400
露光補正量 : EV-0.7
ISO設定 : 400
【作者エッセイ】
薄暗い林の中、すっくと空に向かって伸びるショウジョウバカマ。力強さを感じます。
【選者コメント】
雰囲気のある作品だ。ショウジョウバカマが生えるような,なんとなく空気に湿り気がある林の感じがよく伝わってくる。林のぼけを斜めに配置したのは,画面に動きが出て正解だ。ややアンダー気味の露出だが,それが林の湿度のようなものを表現するのにプラスに働いている。左の花にピントがないのはやや惜しい気がする。

拡大モード

佳作5

夢の跡に生きる by mou39さん

【撮影データ】使用カメラ = sonyα700
使用レンズ = 50mmマクロ
撮影データ = f/3.5、1/400秒、ISO-400、-0.7補正
【選者コメント】
岩の隙間から顔を出すのはいかにもスミレらしい。その生態をうまく描きながら,隙間が描くラインを構図に生かしたのはなかなかの腕前である。特に,隙間が黒く落ちてシャドウになっているのが画面をうまく引き締めている。難癖をつけるなら,タチツボスミレの花が横一線なのでやや画面が窮屈に感じられる。このラインを画面を斜めに区切るようにもってくることができたなら,さらにワンランクアップした作品になっただろう。

拡大モード